はじめに
毎年、新入社員の受け入れ教育などで絶対に聞かれる質問があります。 「配属までに、プログラミングの勉強をしておきたいのですが、どの言語を最初に学ぶべきですか?」
正直、質問する側の気持ちはものすごくよく分かります。せっかく先取りして勉強するなら、最初の仕事でそのまま使える言語であってほしい。そして、職場の先輩ならそれを予測できるだろう、と思うのは当然です。
しかし、結論から言うと「最初にどの言語を担当するか」を事前に予測することはできないことが多いです。わかっていたとしてもその言語を自学自習のための最初の言語としておすすめできるかは別の話なのです。さらに、この問いは案外責任重大であるため、先輩たちは「最初に勉強する言語はなんでもいいよ。ひとつでも習得すれば、他の言語もすんなり習得できるから」という、お決まりの回答をしがちです。
これは事実として正しいのですが、質問者からすれば「もう少しヒントがほしいんだけど」というのが本音ですよね。
そこで今回は、現役メーカー情シスの視点で、「メーカー情シスに配属されるプログラミング未経験者」が最初に勉強すべき言語を判断するための、リアルな基準と具体的な答えをお伝えします。
最初の言語選びで「絶対に挫折しない」ための6つの条件
プログラミング学習において最も恐れるべきは「挫折」です。とにかく最初のハードルを下げるために、以下の6つの条件を満たす言語を選んでください。
条件①:お金をかけずに自学習ができる 勉強を始めるのにライセンス費用がかかるものは真っ先に外します。また、自分がWindows PCしか持っていないのに、わざわざ新しくMacを買ってまでApple製品向けの言語(Swiftなど)をやろうとするのも、最初のステップとしては論外です。
条件②:環境構築が圧倒的に簡単である プログラムは「書くまでの準備(環境構築)」が一番の鬼門です。下手すると開発ソフトのセットアップだけで1日中かかり、コードを書く前に挫折します。「これ一つインストールすればOK」という簡単なものを選びます。
条件③:日本で広く使われている(=調べやすい) 初心者は公式ドキュメントを自力で読んで理解することは絶対にできません。壁にぶつかった時、優しく解説された日本語の技術ブログが見つかりやすいか、そして生成AI(ChatGPTやGeminiなど)に質問した時に正確な答えが返ってくるかが非常に重要です。
条件④:「システムとして動いた!」という感動までの工程が少ない 世間では「最初はHTML/CSSやJavaScriptなどのWeb系スクリプト言語が良い」と言われがちですが、メーカー情シスの視点では賛成できません。システム開発の基礎であることは間違いないのですが、「システムと呼べる形」に到達するまでのステップが多いからです。最初は「短いコードを書いただけで、もうシステムっぽいものができた!」という感動を早く味わえる言語を選ぶべきです。
条件⑤:配属グループの傾向に合っている 情シスの中でも、ITインフラ担当、現場(工場)に近いシステム担当、バックオフィス担当など、配属先によってよく使う技術の傾向は変わります。どれに転んでも潰しが効くものが理想です。
条件⑥:言語(構文)が簡単で、直感的に読める 専門的な理由は省きますが、人間の言葉に近く、自然と「こういう意味かな?」と納得しやすい構文であることは、初心者の学習においてとても大切です。
条件をクリアした、おすすめの言語3選
上記の条件を踏まえ、現役メーカー情シスとしておすすめする言語はこの3つです。
おすすめ1:Python(パイソン)
上記の全ての条件を完璧に満たす、最強の言語の一つです。 AI開発で有名ですが、面倒なファイル処理の自動化やデータ集計など、日々のちょっとした業務を楽にするのが大の得意です。条件⑤に関しても、インフラ、業務システム、バックオフィス……どのグループに配属されたとしても、Pythonの知識は絶対に役立ちます。
おすすめ2:C#(シーシャープ)
こちらも上記の全条件を満たします。特にメーカーの「現場に近いシステム担当」に配属された場合、工場内で動くシステム等でよく使われているため非常に強力です。 C#の素晴らしい点は、「Visual Studio」というMicrosoftのソフト(Home版なら無料)を一つ入れるだけで完璧な環境が整うこと。そして、マウス操作でボタンやテキストボックスを配置し、すぐに「Windowsアプリの画面」が作れるため、条件④の「システムができた感動」を最も早く味わえます。
おすすめ3:VBA(マクロ)
会社や自分のPCにすでに「Excel(Office)」が入っている前提であれば、これも大いにアリです。環境構築は実質ゼロ秒で終わります。 難点としては、情シス内で「VBAが書けます!」とアピールしても、本格的なシステム開発のスキルとしてはあまり高く評価されないこと。しかし、「プログラミングの基礎を学ぶ」「自分の業務を自動化する」という初心者の目的においては、間違いなく優秀なツールです。
【コラム】なぜ、有名な「Java」をおすすめしないのか?
メーカーの基幹システムなどでは、「Java」は現役で広く使われています。 しかし、環境構築がややこしく、学習の初期段階で「オブジェクト指向」という初心者には理解しがたい概念の壁が立ちはだかるため、最初の言語としては高確率で挫折します。「実務で使う可能性が高いが、最初に自学自習で触れるべきではない」というのが私の意見です。
MacのPCしか持っていない方へ
最後に、条件①で「お金をかけない」と言ったことと矛盾してしまいますが、もしあなたが「MacのPCしか持っていない」のであれば、安いもので構わないのでWindowsのPCを買ってください。
日本のメーカーで、Windowsが主流でない会社はほぼ存在しません。 プログラミングの学習をする以前の問題として、新人の頃に任されやすいPCのセットアップや、ヘルプデスク業務など、情シスの日々の業務では「Windows PCの操作への慣れ」が息をするように必須になります。
Macでプログラミングの学習を始めるよりも、まずは自分専用のWindows PCを触り倒し、Windowsの操作や設定に慣れ親しむことを強く推奨します。
まとめ
プログラミングは、最初の言語を習得するまでが一番苦しく、途中で諦めてしまう人がとても多い世界です。だからこそ、とことん「最初の簡単さ」と「動く楽しさ」にこだわって計画を立ててください。
「なんでもいい」と言われて迷っていた皆さんが、PythonかC#(あるいはVBA)の画面を開き、最初のプログラムを動かすきっかけになれば幸いです!
※あくまでメーカー情シス配属になる場合の推奨パターンになります。他システム開発会社などの方にとっても、メーカー顧客担当の場合などは参考になるかもしれません。


コメント