開発のゴールは運用のスタート!システム「リリース」のリアルと絶対の掟

システム開発

はじめに

要件定義から始まり、基本設計、詳細設計、プログラミング、そして地道なテスト工程……。 長く険しかった「システム開発フロー」の解説も、ついに最終回を迎えました。

すべてのテストをクリアし、いよいよユーザーにシステムを使ってもらう瞬間。それが「リリース(本番公開)」です。

情シス初心者や、他部署からDX推進部門に異動してきた方の中には、「完成したプログラムファイルを本番サーバーに置けば終わりでしょ?」と考えている方もいるかもしれません。

しかし、事業会社の情シスにとって、リリースは単なる「作業」ではなく「一大イベント」です。そして、最も緊張感が高く、トラブルが起きやすい瞬間でもあります。 今回は、リリース当日に情シスが何を行っているのか、そして現場で絶対に意識すべき「リアルな掟」について深掘りして解説します。

リリース当日に情シスがやること

システムを本番環境で動かすために、情シスは主に以下の3つのステップを踏んでリリースの準備を完了させます。

プログラムの本番環境への配置(デプロイ)

テスト環境で動かしていたプログラムを、本番用のサーバーにコピー(配置)します。 最近はクラウド環境や自動化ツールを使って数クリックで終わることも増えましたが、古いシステムの場合は、手作業でファイルを一つ一つ上書きしていくようなヒリヒリする作業が発生することもあります。

データ移行(初期データの投入)

新しいシステムを使い始めるために必要な「最初のデータ」をデータベースに流し込みます。 例えば、社員のマスタデータや、工場の設備リストなどです。もし「旧システム」からのリプレイス(入れ替え)であれば、旧システムのデータを抽出して、新システム用に変換して取り込むという、非常に神経を使う作業になります。

ユーザーへの周知と「入り口」の案内

システムが動く状態になったら、現場のユーザーに対して「今日からこのシステム(URLなど)を使ってください」と案内を出します。 同時に、「旧システムはもう使えません(入力できないようにロックします)」という切り替えの宣言を行います。

【現場のリアル】リリース時に絶対に意識すべき「3つの掟」

上記はあくまで教科書的な手順です。ここからは、メーカーの情シス・DX現場だからこそ痛感する「リリースのリアルな掟」を3つ紹介します。

掟その1:必ず「切り戻し(ロールバック)手順」を用意する

情シスがリリースにあたって最も意識すべきこと。それは「今回のリリースは失敗するかもしれない」と想定しておくことです。

テスト環境でどれだけ完璧に動いていても、本番環境のサーバー設定や、想定外のユーザー操作によって、リリース直後にシステムが致命的なエラーを起こすことは十分にあり得ます。もし工場の生産を止めるようなエラーが出たら、大パニックです。

その時、情シスが持っていなければならないのが「切り戻し(ロールバック)」の決断と手順です。 「新システムを一旦停止して、今日の業務は旧システム(あるいは紙とExcel)で乗り切ってもらう」ための手順を、事前に必ず用意しておかなければなりません。 「ダメなら勇気を持って元に戻す」。この退路を確保しておくことこそが、プロの情シスの大切な仕事です。

掟その2:メーカーならではの「切り替えタイミング」の調整

一般企業の社内システムであれば、「金曜日の夜間にリリース作業をして、月曜日の朝から新システム開始」というスケジュールが定番です。

しかし、工場を持つメーカーの場合はそう簡単にはいきません。 「工場のラインは土日も24時間動いている」というケースがあるからです。旧システムを止めて新システムに入れ替える「空白の時間(ダウンタイム)」をいつ設定するのか?夜勤の担当者はどうやって業務を引き継ぐのか?

これらは情シスだけで勝手に決められるものではありません。製造部門の責任者や、現場のシフト管理者と綿密に打ち合わせをして、「業務への影響が最も少ない、奇跡の数時間」を見つけ出す調整力が求められます。

掟その3:リリース直後は「初期流動管理期間」と心得る

「無事にシステムが動いた!これで開発プロジェクトは終わりだ、お疲れ様でした!」 ……と言いたいところですが、現実は違います。リリース直後の数日間〜数週間は、情シスにとって「嵐」のような期間になります。

  • 「ログインのパスワードが分からない!」
  • 「マニュアル通りにやったのにエラーが出る!(実はユーザーの入力ミス)」
  • 「想定外の操作をされてシステムが落ちた!」

このように、現場からの問い合わせやクレームが殺到します。これを製造業の品質管理の用語になぞらえて「初期流動管理(初期トラブルが落ち着くまで特別に監視・対応する期間)」と呼びます。

リリース当日はゴールではなく、運用という新たなフェーズの「0日目」です。現場からの問い合わせに即座に対応できるサポート体制(ヘルプデスクやチャット窓口など)を事前に整えておくことが、システムを社内に定着させるための絶対条件です。

まとめ:システム開発フロー編を終えて

ここまで、「要件定義」から「リリース」に至るまでのシステム開発フローと、事業会社情シスならではのリアルな実態をお届けしてきました。

システムは「作って終わり」ではありません。リリースされたシステムは、まるで生き物のように、会社のビジネス環境や現場の要望の変化に合わせて、日々アップデートを繰り返していくことになります。

これから情シスやDX部門でシステム開発に関わる皆さんは、「現場の課題をどうITで解決するか(要件定義の黄金の魂)」から始まり、「どうすれば止まらないシステムとして運用できるか(リリースの切り戻しと初期流動)」まで、広い視野を持ってプロジェクトに挑んでみてください。

苦労してリリースしたシステムが、現場のユーザーから「これ、すごく便利になったよ!ありがとう!」と言われた瞬間の達成感は、何度味わっても最高です。 この連載が、皆さんのプロジェクトを成功に導くためのヒントになれば幸いです!

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