はじめに
前回の記事では、要件定義からリリースに至るまでの「システム開発の基本フロー」をご紹介しました。
しかし、DX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれる昨今、社内やITベンダーとの打ち合わせでこんな言葉を耳にすることはありませんか? 「これからの時代、開発はウォーターフォールじゃなくてアジャイルでしょ!」
情シスに配属されたばかりの方や、他部署からDX部門へ異動してきた方にとって、いきなり横文字を並べられても「何が違うの?」「どっちが正解なの?」と戸惑ってしまいますよね。
今回は、システム開発の2大手法である「ウォーターフォール」と「アジャイル」の違いと、メーカーの情シス・DX現場における「リアルな使い分け」について分かりやすく解説します。
ざっくり解説!ウォーターフォールとアジャイルの違い
まずは、それぞれの開発手法の特徴をシンプルに理解しましょう。
ウォーターフォール型(滝のように上から下へ)
前回ご紹介した「要件定義 → 設計 → 開発 → テスト → リリース」という工程を、1つずつ順番に、後戻りすることなく進めていくのがウォーターフォール型です。水が滝(ウォーターフォール)の上から下へ落ちるように進むことから名付けられました。
- メリット: スケジュールや予算、完成形(ゴール)が最初から明確。進捗管理がしやすい。
- デメリット: 途中で「やっぱりここはこうしたい」という仕様変更が発生すると、手戻りのダメージ(時間・コスト)が非常に大きい。
アジャイル型(小さく作って、素早く改善)
アジャイル(Agile)は「素早い」「機敏な」という意味です。最初から全ての要件をガチガチに決めるのではなく、「設計 → 開発 → テスト → リリース」の短いサイクル(数週間程度)を何度も繰り返し、少しずつ機能を拡張していく手法です。
- メリット: 途中の仕様変更に強く、実際に動く画面をユーザーに早く見せることができる。
- デメリット: ゴールが変動しやすいため、全体のスケジュールや最終的な予算が読みづらい。
【現場のリアル】「アジャイル=とにかく速く作れる」は勘違い!?
ここで、DX推進の現場でよく起こる「あるある」をご紹介します。 経営層や事業部門から「急いでるから、今回はアジャイルで作ってよ!」と言われるケースです。
実はこれ、大きな勘違いを含んでいます。 アジャイルは「最初の機能がリリースされるまでの期間」は速いですが、システム全体の完成が速くなる魔法ではありません。むしろ、ユーザーからのフィードバックを受けて何度も作り直すため、トータルの開発期間やコストはウォーターフォールより膨らむことも珍しくないのです。
アジャイルの本当の価値は「速さ」ではなく、「ビジネス環境の変化に合わせて、柔軟に軌道修正できること(変化への強さ)」にあります。
メーカー情シス・DX現場での「リアルな使い分け」
では、実際のところどちらの手法を採用すべきなのでしょうか? 結論から言うと、「どちらが優れているか」ではなく「作るシステムによって適材適所で使い分ける」のが正解です。特にメーカーの現場では、この切り分けが非常に重要になります。
ウォーターフォールが向いている領域(絶対に止められないシステム)
- 具体例: 生産管理システム、基幹システム(ERP)、工場ラインと連動するシステムなど
- 理由: 工場の生産や会社の根幹に関わるシステムは、「1つのバグが工場全体の稼働ストップに直結する」という厳しい世界です。途中で仕様がコロコロ変わっては困ります。最初から要件を綿密に定義し、徹底的なテストを行ってからリリースするウォーターフォールが圧倒的に向いています。
アジャイルが向いている領域(正解がわからない新しいシステム)
- 具体例: 現場向けの新しい業務効率化アプリ、新規事業のWebサービス、データ分析ダッシュボードなど
- 理由: 「現場の課題を解決したいけれど、どんな画面なら使いやすいか作ってみないと分からない」という場合です。まずは最小限の機能(MVP)だけを作って現場の担当者に触ってもらい、「このボタンはもっと大きくして」「この入力欄は不要」といった意見を取り入れながら育てていくアジャイルが適しています。
まとめ:流行り言葉に流されず「システムの特性」を見極めよう
システム開発において、「絶対にウォーターフォールが古い」「アジャイルが常に正解」ということはありません。
情シス初心者やDX部門の担当者に求められるのは、「アジャイルでやりましょう!」という流行りの言葉に飛びつくことではありません。「今回作るシステムは、絶対に止まってはいけない重厚長大なものか?それとも、走りながら考えるべき柔軟なものか?」を見極める視点です。
システムを利用するユーザーの人数、影響範囲、ビジネスの目的などを踏まえて、最適な手法を選択(あるいはITベンダーに提案)できるようになれば、あなたも立派なシステム開発のディレクターです!


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